2019.01.12 Note

少し前に長崎にできたアイランドルミナと最近大阪にできたサクヤルミナに行ってきました。

ルミナはMomentFactoryっていうカナダのものすごくイケてる会社が世界各地でやってる体験型ナイトウォーク。要は屋外で光ったり音がなったりインタラクションがあったりするやつです。詳細は以下公式ページに譲ります。

ISLAND LUMINA (アイランドルミナ)
サクヤルミナ | 大阪城ナイトウォーク

MomentFactoryは日本にも支社ができたんですけど制作拠点はない模様。TouchDesignerの活用事例なんかにも名前の出てくる会社です。以前東京で『食神さまの不思議なレストラン展』という、おそらくテーブルプロジェクションマッピングなど使った系のイベントも昔やってましたね。それには僕は行けてないので詳しくないです。

アイランドルミナとサクヤルミナの比較をしつつ、インタラクションやシステムという視点から両者の感想をざっくり。以降には若干のネタバレを含むかも知れないですが、個人的にはネタバレが価値を下げる類のものではないように思います。

まずどちらも屋外で、広いです。ナイトウォークというだけあります。ただ比較するとアイランドルミナのほうがあくまで体感ベースですがおそらくかなり広く、そういう意味ではサクヤルミナは若干の物足りなさがあります。アイランドルミナは森の中や海岸など自然の中を4~50分くらいは歩いた気がするので高低差もありそれなりに体力を使いその分ボリューム感も感じます。サクヤルミナは大阪城公園なので広さには限界があったように思います。それは演出の規模感にもあらわれていて、広さや大きさは圧倒的にアイランドルミナです。木に覆われた小高い丘にプロジェクションしたり眼下に広がる森にプロジェクションしたり。

一方でビジュアル/アートの面では、単にトンマナの話かとは思いますが、アイランドルミナは若干海外感が強い印象を受けました。キャラクターデザインとかCGのレンダリングの感じとか。その点ではサクヤルミナのほうが現代的でポップ、かわいいけどかわいらしすぎず、表情はある感じで、日本人になじみやすい感じのデザインという印象です。途中でプロジェクションマッピングで出てきた和服を着た狐のキャラクターも可愛かった。好きな感じです。あとアイランドルミナは主人公もCGでしたがサクヤルミナは主人公は実写、キャラクターはノンリアリスティックなCGでしたが、合成に違和感はなかったです。実写の人間を服装はヘア含めてうまくCGに溶け込ませていた印象です。

トンマナについてはもうひとつ明確な違いがあって、アイランドルミナのほうは徹底してノンバーバル。キャラクターは言葉を話さないし字幕のようなものもありません(と記憶してるけど違ったらすみません)。そのあたりで実はストーリーの進行を完全には把握しきれなかったかもしれないと思っています。最後のシーンも、あ、なるほどこれが最後ってことかな?みたいな。そういう点では全体の流れっていうものはそれほど強くはないように感じます。だとしても一箇所一箇所の空間の絵的なきれいさ、異世界感、光の演出が良いので、不満感はありません。それに対してサクヤルミナは日英併記の字幕があって、ある場面では日本語は喋ってすらいたような気がします。とにかくアイランドルミナほど徹底してノンバーバルというわけではないのは間違いなく、そこに思想の違いを感じます。そしてそれゆえアイランドルミナより若干ストーリーラインが理解しやすいです。そのあたりは見込み客層の違いから異なる思想になったのか、前回を踏まえて改善したのかはどうなんでしょう、気になります。他の世界中のルミナも製作時期順に全部観たいところです。

インタラクションはどちらも少ないです。いわゆる”インタラクティブさ”がストロングポイントではないように感じます。あの規模でしかも屋外で常設となるとそうそう複雑なシステムは組めない。アイランドルミナは2箇所、サクヤルミナは1箇所くらいだったかな?アイランドルミナのほうがよりフィジカルなインタラクションなので没入感はありました。サクヤルミナのほうがアイランドルミナよりもテクノロジー的には新しいものを使っているけれども、ユーザーがその行為を行うストーリーラインにおける必然性、といったものを感じさせるところには至っていなかった印象です。顔検出してどうこうとか。今っぽくはありますが、フィジカルな感じではなかったので、どちらが楽しいかは好みの分かれる所かなと。技術難易度的にはいずれも作り方の想像もつかないようなものではなかったのでその点では僕自身の自信にもなりましたが、同時に上にも述べたように特にアイランドルミナの広さを考えるとあの規模を作り切る膨大なプロジェクトマネジメントと機材面のテクニカルの凄みに目眩がする思いです。風雨にさらされながら全部問題なくちゃんと動いているってすごいこと。それにその広大なエリアを歩き回って色々な演出のされた空間に入って動き回ってとちしてること自体に既にインタラクティブなので細かなインタラクションはもはや重要ではないのかもしれない、と体験作りに関して新たな視点を得た気持ちでした。

システム的には全体を通してユーザーが複数の状態を保持するようなものも少ないです。エンジニア的に言うとステートが少ない、ということですね。アイランドルミナはユーザーの状態はゼロです。サクヤルミナはある場所で写真が撮られてそれが後で活用されますが、いっても状態遷移は最低限。最初に渡されるQRコードから後でアクセスするとウェブページでも見れます。僕がここ数年関わっているエンタメ系案件のお化け屋敷やアトラクションでQRコード発行して後から個人に生成したウェブページを閲覧できるシステムを何度も設計して作っているので、ああやっぱこうなるよねという感じでした。状態をあまり持たせない設計についてもまあこうするよね、っていう感じです。ソフトウェア内で完結するものでもない以上、状態を増やしていくと指数関数的に開発やテストが大変になっていくし運用時のトラブルも増えるので、エンジニアリングとして妥当な判断です。しかしだからこそ例えばUSJの妖怪ウォッチアトラクションのような膨大な状態を保持するものを体験したときにはそれはそれで作ったチームのすごみを想像して鼻がツンとする気持ちにもなったことを思い出しました。

サクヤルミナでひとつもったいないなと思った点としては、ルートの途中で大阪城公園内を歩く一般人もいるエリアをまたぐこと。普通にランニングしている人とすれ違ってしまので、どうしてもプレゼンスが剥がれてしまいます。アイランドルミナは隔離されているゆえにそういうことはなく、没入感という点ではアイランドルミナに軍配と感じます。まあそのかわりあの広さで誰も入ってこない場所を確保するために場所はむっちゃ遠いですけどね。

僕個人の考え方としては圧倒的なボリュームは満足感を向上させてくれるので大きいことはいいことだと思うし、またその規模を作り切るチームに興味がわきました。どちらも見に行って損はないように思います。

最後にあらためて「ネタバレが価値を下げる類のものではないように思う」と書いた点についてです。要は現地に行ってもストーリーラインを完璧に理解することの体験上の重要性がさほど高くないということ、謎解き要素や達成要素がないのでネタバレが怖くないということ。というかそもそもあらかじめウェブサイトにストーリーが書いてます。そういう設計になってます。そしてやっぱり空間の美しさや規模といった明らかに現地に行かないと得られない体験価値がコアなので、そこも言葉で説明されても写真が拡散されても特に問題がない。徹底してそういう体験設計になっているように思いました。

※写真はサクヤルミナ。

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